事務所ブログ

2014年12月28日 日曜日

相続債務

相続人は、被相続人の一身に専属したものを除いて、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するので、預金や不動産のようなプラスの財産だけでなく、借金や保証債務のようなマイナスの財産も相続することになります。

共同相続の場合は、各相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。
金銭債務のような可分債務については、判例は、法定相続分に応じて当然に分割承継されるとしています。
そのため、相続債務は遺産分割において当然にその対象となるものではありません。
一方、遺留分の算定にあたっては、相続債務は評価(控除)の対象となります。

相続債務が大きすぎて支払いきれない場合は、原則として相続から3ヶ月以内であれば、相続放棄(プラスの財産もマイナスの財産も一切承継しない)、あるいは、限定承認(プラスの財産の限度でマイナスの財産を承継する)することもできます。


相続放棄についての疑問、質問等があれば、是非当事務所にご相談下さい。
藤沢法律税務FP事務所

投稿者 弁護士 石和康宏 | 記事URL

2014年12月20日 土曜日

相続回復請求権

Q 父が死亡し、相続人は長男である私と後妻の二人ですが、後妻が相続財産である父の土地を勝手に自己の名義に変えていました。私はそのことを6年前に知ったのですが、このたび、後妻に対して自己の持分の返還請求をしたところ、後妻から私の自己の持分を取り戻す権利は5年の経過により時効消滅していると言われました。私はもはや自己の持分を取り戻すことはできないのでしょうか。

A 民法884条は、相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅すると規定しています。
相続回復請求権は、真正相続人が表見相続人に対し、侵害された相続権の回復を求めることができる権利とされており、最判は、相続回復請求権は共同相続人間における相続権の帰属に関する争いにも適用されるとしています。
ただし、最判は、相続回復請求権に対して時効の利益を享受できる相手方について、自ら相続人でないことを知りながら相続人であると称し、又はその者に相続権があると信ぜられるべき合理的な事由があるわけではないにもかかわらず自ら相続人であると称し、相続財産を占有管理することによりこれを侵害している者は、本来、相続回復請求制度が対象として考えている者にはあたらないとしています。
すなわち、相続権がないことにつき善意でかつそう信ずべき合理的事由がある場合にのみ、相続回復請求制度が適用されることになります。
したがって、本件のような場合は、後妻についてあなたの相続権がないことにつき善意でかつそう信ずべき合理的事由がある場合とは到底言えないため、相続回復請求制度の対象ではありません。
あなたの持分の返還請求は無権利者に対する所有権に基づく物権的請求権ですので、消滅時効にかかることはありません。
よって、あなたは自己の持分の取り戻しを請求することができます。

なお、この相続回復請求制度はどのような場合に適用があるのかといえば、生まれてすぐ他人の夫婦間の子供として出生届が出されていたような者(いわゆる藁の上からの養子)がいる場合、また、死後認知により被相続人との親子関係が確定された相続人が生じた場合に、この者を除いて遺産分割がなされた場合など特殊な場合に限られます。

投稿者 弁護士 石和康宏 | 記事URL

2014年12月14日 日曜日

投資信託と遺産分割

Q 投資信託を共同相続した場合、共同相続人の一人が相続割合に従って単独で償還請求権を行使できますか。

A 最高裁判所の判例(平成26年2月25日)が、委託者指図型投資信託に係る信託契約に基づく受益権は、口数を単位とするものであって、その内容として、法令上、償還請求権及び収益分配請求権という金銭支払請求権のほか、信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており、可分給付を目的とする権利でないものが含まれているので、このような投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないとしています。

 さらに、委託者指図型投資信託の受益権につき、共同相続開始後に元本償還金等が発生し、それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合にも、上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の一人は、上記販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができないというべきであると最近最高裁で判断されています(平成26年12月12日)。

 したがって、投信信託(一般の人々の間に証券会社や銀行等を通じて広く取引されている投資信託は、委託者指図型投資信託になります)を共同相続した場合、遺産分割を経ずに、共同相続人の一人が相続分に従って単独で権利行使することはできません。


遺産(相続財産)、その分割についての疑問、質問等があれば、是非当事務所にご相談下さい。
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投稿者 弁護士 石和康宏 | 記事URL

2014年12月 7日 日曜日

法定単純承認

単純承認とは、相続の全効果の発生、すなわち、被相続人の権利義務を無限に承継することを承認する相手方のない不要式の意思表示と解されています。

また、以下の一定の事由がある場合にも単純承認をしたものとみなされ、これらは法定単純承認といわれます。

① 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき

② 相続人が熟慮期間(原則相続から3カ月)内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき

③ 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠蔽し、私にこれを消費し、又は悪意で相続財産の目録中に記載しなかったとき

①の処分は、限定承認・放棄の前にされた処分に限ります。
処分とは、財産の形状、性質を変える行為をさし、相続財産の売却等の法律行為だけでなく、相続財産である家屋の取り壊しや動産の毀損などの事実行為も含むとされています。

共同相続人の一人が③の行為を行っても、限定承認の効力は覆りません。
ただ、相続債権者は③の行為をした相続人に対し、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、その相続分に応じて権利を行使することができます。


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