事務所ブログ

2014年12月20日 土曜日

相続回復請求権

Q 父が死亡し、相続人は長男である私と後妻の二人ですが、後妻が相続財産である父の土地を勝手に自己の名義に変えていました。私はそのことを6年前に知ったのですが、このたび、後妻に対して自己の持分の返還請求をしたところ、後妻から私の自己の持分を取り戻す権利は5年の経過により時効消滅していると言われました。私はもはや自己の持分を取り戻すことはできないのでしょうか。

A 民法884条は、相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅すると規定しています。
相続回復請求権は、真正相続人が表見相続人に対し、侵害された相続権の回復を求めることができる権利とされており、最判は、相続回復請求権は共同相続人間における相続権の帰属に関する争いにも適用されるとしています。
ただし、最判は、相続回復請求権に対して時効の利益を享受できる相手方について、自ら相続人でないことを知りながら相続人であると称し、又はその者に相続権があると信ぜられるべき合理的な事由があるわけではないにもかかわらず自ら相続人であると称し、相続財産を占有管理することによりこれを侵害している者は、本来、相続回復請求制度が対象として考えている者にはあたらないとしています。
すなわち、相続権がないことにつき善意でかつそう信ずべき合理的事由がある場合にのみ、相続回復請求制度が適用されることになります。
したがって、本件のような場合は、後妻についてあなたの相続権がないことにつき善意でかつそう信ずべき合理的事由がある場合とは到底言えないため、相続回復請求制度の対象ではありません。
あなたの持分の返還請求は無権利者に対する所有権に基づく物権的請求権ですので、消滅時効にかかることはありません。
よって、あなたは自己の持分の取り戻しを請求することができます。

なお、この相続回復請求制度はどのような場合に適用があるのかといえば、生まれてすぐ他人の夫婦間の子供として出生届が出されていたような者(いわゆる藁の上からの養子)がいる場合、また、死後認知により被相続人との親子関係が確定された相続人が生じた場合に、この者を除いて遺産分割がなされた場合など特殊な場合に限られます。



投稿者 弁護士 石和康宏

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